胚性幹細胞および人工多能性幹細胞由来からの高心臓形成性前駆細胞および心筋細胞の効率的製造および使用
专利摘要:
本発明は、中胚葉細胞に分化された人工多能性幹(iPS)細胞または胚性幹(ES)細胞をシクロスポリン−Aの存在下で培養することを含む、心筋細胞および/または心臓前駆細胞を製造するための方法に関する。 公开号:JP2011515064A 申请号:JP2010507561 申请日:2008-08-29 公开日:2011-05-19 发明作者:ペイシ ヤン;潤 山下 申请人:国立大学法人京都大学; IPC主号:C12N5-073
专利说明:
[0001] 本願の優先権 本願は、2008年3月26日出願の米国仮出願第61/064,777号の優先権を主張する。この優先権主張出願の全開示内容は本願の一部とみなし、明らかに、参照によりそのまま本明細書に組み入れるものとする。 技術分野 本発明は、心筋細胞および/または心臓前駆細胞を生産するための方法に関する。より具体的には、該方法は、中胚葉細胞に分化された人工多能性幹(iPS)細胞または胚性幹(ES)細胞をシクロスポリン−Aの存在下で培養することを含む。] 背景技術 [0002] 発明の背景 最近、胚性幹(ES)細胞とは異なるがES細胞様である新規な多能性幹細胞、すなわち、人工多能性幹(iPS)細胞が、特定された転写因子をコードする遺伝子による形質導入により、成体体細胞から生成された(Takahashi, K.およびYamanaka, S., Cell 126, 663-676 (2006); Okita, K., Ichisaka, T.およびYamanaka, S., Nature 448, 313-317 (2007); Takahashi, K.ら, Cell 131, 861-872 (2007); Yu, J.ら, Science 318, 1917-1920 (2007))。成体ヒト組織からのiPS細胞の樹立が、細胞移植による再生医療、ならびに患者特異的細胞モデルおよび創薬系の生成を通じて、iPS細胞の臨床応用を促進しつつある(Yamanaka, S., Cell Stem Cell 1, 39-49 (2007); Laflamme, M.A.およびMurry, C.E., Nat. Biotechnol. 23, 845-856 (2005); Kovacic, J.C.,ら, Cell Stem Cell 1, 628-633 (2007))。] [0003] ES細胞およびiPS細胞は、増殖、多能性および分化に関してほぼ同様の全体的な特徴を示すので(Takahashi, K.およびYamanaka, S., Cell 126, 663-676 (2006); Okita, K.ら, Nature 448, 313-317 (2007); Takahashi, K.ら, Cell 131, 861-872 (2007); Yu, J.ら, Science 318, 1917-1920 (2007); Narazaki, G,ら,Circulation 118, 498-506 (2008))、ES細胞に関する研究は、iPS細胞の研究における科学的および技術的基礎として利用することができる。これまでに、本発明者らは、in vitroにおいて心血管発生の初期過程を再現することができる新規なES細胞分化系を確立した(Yamashita, J.ら, Nature 408, 92-96 (2000); Yamashita, J.K.ら,FASEB J. 19, 1534-1536 (2005); Yanagi, K.ら, Stem Cells 25, 2712-2719 (2007); Yurugi-Kobayashi, T.ら, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 26, 1977-1984 (2006); Kono. T.ら, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 26, 2070-2076 (2006); Hiraoka-Kanie, M.ら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 351, 669-674 (2006))。内皮細胞(EC)、壁細胞(MC;周皮細胞および血管平滑筋細胞)(Yamashita, J.ら, Nature 408, 92-96 (2000))および心筋細胞(Yamashita, J.K.ら, FASEB J. 19, 1534-1536 (2005))は、共通の中胚葉前駆細胞、すなわち、Flk1(血管内皮増殖因子受容体−2(VEGFR2)とも呼ばれる)発現細胞から体系的に誘導される。本発明者らはまた、Flk1+中胚葉細胞の後代のうち心臓前駆細胞集団、FCV細胞(Flk1+/CXCR4+/血管内皮カドヘリン−細胞集団)を同定することにも成功した(Yamashita, J.K.ら, FASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。Flk1+細胞の後代における小さいサブセットに過ぎないFCV細胞は、極めて心臓特異的な前駆細胞である活性を示したが、FCV細胞の効率的な増殖方法はまだ知られていない。最近になり、本発明者らは、iPS細胞からFCV前駆細胞への誘導を検討することができる、類似した心血管細胞用のマウスiPS分化系の確立に成功した(Yamashita, J.K.ら, FASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。] [0004] しかしながら、心筋細胞については、心筋細胞を誘導するための効率的な方法、心臓前駆細胞の同定および増殖、ならびに心臓分化のモデル系の確立などのiPS細胞技術がまだ確立されていない。] 先行技術 [0005] Takahashi, K.およびYamanaka, S., Cell 126, 663-676 (2006) Okita, K., Ichisaka, T.およびYamanaka, S., Nature 448, 313-317 (2007) Takahashi, K.ら, Cell 131, 861-872 (2007) Yu, J.ら, Science 318, 1917-1920 (2007) Yamanaka, S., Cell Stem Cell 1, 39-49 (2007) Laflamme, M.A.およびMurry, C.E., Nat. Biotechnol. 23, 845-856 (2005) Kovacic, J.C.,ら, Cell Stem Cell 1, 628-633 (2007) Narazaki, G,ら,Circulation 118, 498-506 (2008) Yamashita, J.ら, Nature 408, 92-96 (2000) Yamashita, J.K.ら,FASEB J. 19, 1534-1536 (2005) Yanagi, K.ら, Stem Cells 25, 2712-2719 (2007) Yurugi-Kobayashi, T.ら, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 26, 1977-1984 (2006) Kono. T.ら, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 26, 2070-2076 (2006) Hiraoka-Kanie, M.ら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 351, 669-674 (2006)] 発明が解決しようとする課題 [0006] 本発明の目的は、ES細胞またはiPS細胞から心臓前駆細胞および/または心筋細胞を効果的に誘導するための方法を提供することである。] [0007] 本発明の他の目的は、前記方法により生産された心臓前駆細胞または心筋細胞を提供することである。] [0008] 本発明の他の目的は、前記の心臓前駆細胞または心筋細胞を使用することにより心疾患を有する被験体を治療するための方法を提供することである。] [0009] 本発明の他の目的は、心疾患の治療のための医薬または移植片またはインプラントの製造における前記心臓前駆細胞または心筋細胞の使用を提供することである。] [0010] 本発明の他の目的は、心筋細胞および/または心臓前駆細胞を誘導し得る薬剤をスクリーニングするための方法を提供することである。] 課題を解決するための手段 [0011] 本発明者らは、今回、Flk1+中胚葉細胞への免疫抑制剤シクロスポリン−A(CSA)の添加が、FCV心臓前駆細胞集団の特異的増殖を介して心筋細胞を強く誘導することを見出した。さらに今回、本発明者らは、ES細胞系におけるこの単純な方法が、iPS細胞における使用に完全に適応されること、詳細には、心臓前駆細胞および心筋細胞がヒトまたはマウスiPS細胞に由来するFlk1+中胚葉細胞から効率よく誘導できることを見出した。この新規な分化技術は、細胞の供給源、移植の方法および創薬を提供することにより心臓再生に幅広く寄与するであろう。] [0012] 発明の概要 従って、本発明は、次のように要約される。] [0013] 第1の態様において、本発明は、中胚葉細胞に分化されたiPS細胞またはES細胞をシクロスポリン−Aの存在下で培養することを含む、心筋細胞および/または心臓前駆細胞を製造するための方法を提供する。] [0014] 一実施形態において、中胚葉細胞はFlk1陽性(Flk1+)である。] [0015] 他の実施形態において、心臓前駆細胞は心筋に分化する能力を有し、より詳細には、心臓前駆細胞はFlk1+/CXCR4+/血管内皮カドヘリン−細胞集団である。] [0016] さらに他の実施形態において、心筋細胞または心臓前駆細胞は心筋組織を組み立てる能力を有する。] [0017] 他の実施形態において、iPS細胞またはES細胞は、有蹄類(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなど)および齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスターなど)、霊長類(ヒト、サル、チンパンジーなど)などを含む哺乳類由来である。好ましくは、哺乳類はヒトおよびマウスである。] [0018] 他の実施形態において、iPS細胞は哺乳類の体細胞から生成される。体細胞は、器官、組織などを構成する細胞などで生殖系細胞以外の任意の細胞である。体細胞の例は、肝臓細胞、胃細胞または皮膚細胞である。] [0019] 他の実施形態において、iPS細胞は、少なくともOctおよびSoxファミリーメンバーの転写因子をコードする遺伝子による形質導入により、哺乳類の体細胞から生成することができる。転写因子はさらに、Klfファミリーメンバーの転写因子、またはKlfファミリーメンバーおよびMycファミリーメンバーの転写因子を含み得る。好ましくは、OctファミリーメンバーはOct3/4を含むことができる;Sox2ファミリーメンバーはSox2を含むことができる;KlfファミリーメンバーはKlf4を含むことができる;Mycファミリーメンバーはc−Mycを含むことができる。] [0020] 第2の態様において、本発明はまた、心筋細胞および/または心臓前駆細胞を誘導し得る薬剤のための候補薬剤をスクリーニングするための方法であって、中胚葉細胞に分化されたiPS細胞を候補薬剤の存在下で培養すること、および該薬剤を拍動コロニーおよび/またはFlk1+/CXCR4+/血管内皮カドヘリン−細胞の形成に基づいて選択することを含む方法を提供する。] [0021] 第3の態様において、本発明はさらに、上記で定義された方法により製造された心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物を提供する。] [0022] 第4の態様において、本発明はさらに、上記で定義された心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物を被験体の心臓に移植することを含む、心疾患を有する被験体を治療するための方法を提供する。被験体は上記で定義された哺乳類、好ましくはヒトを含む。心疾患は、限定されるものではないが、心筋梗塞および心筋症を包む心不全を含む。] [0023] 第5の態様において、本発明はさらに、心疾患を有する被験体を治療するための医薬または移植片またはインプラントの製造における、上記で定義された心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物の使用を提供する。被験体および心疾患は上記で定義された通りである。] 図面の簡単な説明 [0024] CSA処理によるES細胞からの心筋細胞および心臓前駆細胞の誘導。図1a−i:CSAによるFlk1+中胚葉からの心筋細胞の誘導(実験1)。a、b:CSAによる心筋細胞誘導の肉眼的所見。左のパネル:対照。右のパネル:CSA処理。スケールバー=400μm。図1a:拍動コロニーの所見。矢印は、拍動コロニーを示す。矢頭は、広域の拍動領域を囲む。図1b:cTnT(褐色)で染色された心筋細胞。図1c:cTnT染色の蛍光強度による心筋細胞誘導の定量的評価。相対蛍光強度で示す(n=9、†p<0.001vs対照)。図1d、e:単離された心筋細胞の所見。d:cTnT(赤)およびDAPI(青)染色。スケールバー=50μm。e:アクチニン(赤)染色。右のパネルは、四角で囲んだ領域を高倍率で示す。明らかな筋節構造が見られる。スケールバー=25μm。 図1f、g:誘導心筋細胞の活動電位。図1f:ペースメーカー電位および自発的拍動を有する細胞。図1g:静止心室型細胞。図1h:CSAによるGFP+心筋細胞誘導のFACS分析。左のパネル:対照。右のパネル:CSA処理。X軸:αMHCプロモーターにより駆動されるGFP。Y軸:側方散乱。全てのFlk1+細胞由来集団を分析した。GFP+心筋細胞のパーセンテージを示す。図1i:純化された心筋細胞の収量。104個のFlk1+細胞から得られたGFP+心筋細胞の細胞数(n=12、†p<0.001vs対照)。図1j、k:Flk1+中胚葉からのFCV前駆細胞の誘導(実験3)。図1j:CSAによる心臓前駆細胞誘導のFACS分析。X軸:Flk1。Y軸:CXCR4。FCV細胞(二重陽性集団)のパーセンテージを示す。図1k:純化された心臓前駆細胞の収量。104個のFlk1+細胞から得られたFCV前駆細胞の細胞数(n=12、†p<0.001vs対照)。 図1l、m:ラット心筋梗塞モデルへのFCV細胞移植(4×105細胞)の代表的データ。GFPおよびcTnTに関する二重免疫染色。上のパネル:GFP(ドナー細胞由来心筋細胞、緑)およびDAPI(青)。下のパネル:cTnT(全心筋細胞、赤)およびDAPI。図1l:梗塞領域の修復に寄与する移植細胞の肉眼的所見。スケールバー=400μm。図1m:四角で囲んだ領域の高倍率像。矢頭は、cTnT+/GFP−である内在性心筋細胞を示す。スケールバー=50μm。図1n:CSA処理によるECおよび心筋細胞の相反所見(実験1)。CD31(全EC;緑)およびcTnT(赤)に関する二重免疫染色。上のパネル:対照。下のパネル:CSA処理。スケールバー=400μm。 CSA処理によるiPS細胞からの心筋細胞および心臓前駆細胞の誘導。図2a、b:CSAによるマウスiPS細胞由来Flk1+中胚葉からの心筋細胞の誘導(実験1)。図2a:CSAによる心筋細胞誘導の肉眼的所見。cTnT染色(赤)。左のパネル:対照。右のパネル:CSA処理。スケールバー=400μm。図2b:cTnT染色の蛍光強度による心筋細胞誘導の定量的評価。相対蛍光強度を示す(n=4、†p<0.001vs対照)。図2c:CSAによるマウスiPS細胞からの心臓前駆細胞誘導のFACS分析(実験3)。X軸:Flk1。Y軸:CXCR4。FCV細胞(二重陽性集団)のパーセンテージを示す。 図2d−f:ヒトiPS細胞からの心筋細胞誘導。ヒトiPS細胞をEND−2細胞と同時培養して心筋細胞を誘導した。図2d:ヒトiPSからの細胞拍動コロニーの肉眼的所見。拍動コロニーを矢頭によって示す。スケールバー(scare bar)=400μm。図2e:END2細胞上の拍動コロニーのcTnT染色。左のパネル:位相差画像。右のパネル:ヒトcTnT染色(緑)。スケールバー=100μm。図2f:分離した拍動コロニーのアクチニン染色。アクチニン(赤)およびDAPI(青)。右のパネルは、四角で囲んだ領域を高倍率で示す。明らかな筋節構造が見られる。スケールバー=25μm。 図2g−i:ヒトiPS細胞からの心筋細胞誘導。ヒトiPS細胞をEND−2細胞と同時培養して心筋細胞を誘導した。図2g:分離した拍動コロニーにおけるCa++トランジェント。細胞質Ca++の変化はfluo−8でモニタリングした。左のパネル:fluo−8添加iPSコロニーの透過画像。中央および左のパネル:蛍光変化の終了時(A)およびピーク時(B)のFluo−8画像。スケールバー=50μm。下のパネル:fluo−8強度変化の経時的推移。強度は周辺部(1)、コロニー全体(2)および中央部(3)で測定した(ROIを中央のパネルに示す)。記録開始時の強度(F0)に対する強度の比(F1/F0)を示す。Caトランジェントがコロニー内でよく同調していることに着目されたい。図2h、i. CSAによるヒトiPS細胞からの心筋細胞の誘導。図2h:12ウェルディッシュにおけるヒトiPS細胞由来拍動コロニーの代表的な肉眼的所見。左のパネル:対照。右のパネル:分化8日目からのCSA処理。赤い矢印:拍動コロニー。図2i:分化12日目のEND−2細胞上に現れた全ヒトiPS細胞由来コロニーにおける拍動コロニーのパーセンテージ(n=8、†p<0.001)。 in vivoにおける心筋細胞再生に対する心臓前駆細胞の効果的な寄与。図3A、B:細胞移植の代表的データ。移植細胞の心筋細胞としての寄与をGFPの免疫染色(褐色)により評価した。スケールバー=400μm。挿入は四角で囲んだ領域を高倍率で示す。スケールバー=100μm。図3A. GFP+細胞の投与(4×105個)。図3B:FCV前駆細胞の投与(4×105個)。図3C:Cx43(緑)およびcTnT(赤)に関する二重免疫染色。Cx43は隣接するcTnT+心筋細胞の間に見られた(矢頭)。スケールバー=100μm。図3D:再生心筋細胞の推定面積(n=3、**p<0.01vsGFP+細胞の投与)。図3E:再生心筋細胞の推定体積(n=3、†p<0.001vsGFP+細胞の投与)。 心筋細胞分化の手順および経時的推移。本実験系では、4つの異なる分化段階を表す細胞、すなわち、未分化ES細胞、Flk1+中胚葉細胞、FCV心臓前駆細胞および心筋細胞が段階的に誘導される。未分化ES細胞は、Flk1+細胞への分化を誘導するために、分化培地中、OP9細胞またはIV型コラーゲン(Col.IV)コーティングディッシュ上で(ES−0日目(ES-d0))、96〜108時間培養した(方法を参照)。FACSにより得られたFlk1+/E−カドヘリン−中胚葉細胞は、心筋細胞へのさらに分化誘導するために、OP9間質細胞上にプレーティングした(Flk−0日目(Flk-d0)と表す)。FCV細胞は、Flk−2日目(Flk-d2)にFlk1+/CXCR4+/血管内皮カドヘリン−集団として出現した。拍動コロニーはFlk−4日目(Flk-d4)に見られ始めた。α−MHCプロモーターにより駆動されるGFP+心筋細胞の出現を評価し、Flk−6日目(Flk-d6)に採取した。実験1:中胚葉から心筋細胞への分化。Flk−0日目に純化されたFlk1+中胚葉細胞にCSAを加え、Flk−6日目に心筋細胞の出現を評価した。実験2:未分化ES細胞から中胚葉への分化。ES−0日目に未分化ES細胞にCSAを加え、ES−4日目(ES-d4)に中胚葉の誘導をFACSによりFlk1+細胞の出現として評価した。実験3:中胚葉から心臓前駆細胞への分化。Flk−0日目にFlk1+細胞にCSAを加え、Flk−2日目にFCV心臓前駆細胞の出現をFACSにより評価した。実験4:心臓前駆細胞から心筋細胞への分化。Flk−2日目に純化されたFCV前駆細胞にCSAを加え、Flk−6日目に心筋細胞の出現を評価した。実験5:心筋細胞の分化に対するCSAの中胚葉特異的効果。CSA(または他の試薬)をFlk−0日目〜2日目にのみ加え、Flk−6日目に心筋細胞の出現を評価した。Flk−2日目の純化されたFCV細胞を慢性病期ラット心筋梗塞モデルに移植した。 心筋細胞分化におけるマウスES細胞の心臓マーカーのRT−PCR分析。純化されたFCV前駆細胞またはGFP+心筋細胞におけるmRNA発現はCSAの非存在下(CSA−)または存在下(CSA+)で誘導する。 本発明の系におけるES細胞からの心臓細胞の誘導効率。1×105の未分化ES細胞から分化を始めると、中胚葉分化の最初の4日間で全細胞数はおよそ100〜150倍(1〜1.5×107細胞)に増える。全細胞のおよそ30〜40%がFlk1+中胚葉細胞となる(およそ4×106細胞)。OP9細胞上で純化されたFlk1+細胞を6日間培養した後(Flk−6日目(Flk-d6))、本発明者らの常法により、4×106個のFlk1+細胞からおよそ1.2×106個の心筋細胞が得られる(図1i)。CSA処理は心筋細胞の誘導をおよそ17倍増強し、その結果、4×106個のFlk1+細胞から2×107個の心筋細胞が得られる(図1i)。CSA増強後、1個のES細胞からおよそ200個の心筋細胞が誘導できる。他方、本発明者らの常法でFlk−2日目(Flk-d2)の4×106個のFlk1+細胞からは8×104個のFCV前駆細胞が誘導できるに過ぎない。CSA処理はFCV前駆細胞誘導をおよそ22倍増強し、その結果、4×106個のFlk1+細胞から1.7×106個のFCV細胞が得られる(図1k)。 初期のES細胞分化に対するCSAの効果。未分化ES細胞からの初期分化に対するCSAの効果(実験2)。図7a:CSAの不在下(CSA−)または存在下(CSA+)でのES−4日目におけるFlk1のFACS分析。図7b:ES−4日目(ES-d4)における中内胚葉マーカーbrachyury、外胚葉マーカーNestinおよびPax6、ならびに内胚葉マーカーAFPおよびFoxa2のmRNA発現。 OP9上での単一のFCV細胞培養からのコロニー。Flk−6日目(Flk-d6)における単一FCV細胞由来のコロニーに対する、DAPI(グレー)とCD31(全EC、緑)、cTnT(全心筋細胞(CM)、赤)およびカルポニン(心筋細胞と壁細胞(MC)、青)の三重染色。図8a:EC/CMコロニー。図8b:CM/MCコロニー。矢頭はカルポニン+/cTnT−のMCを示す。図8c:三重陽性コロニー。矢頭はカルポニン+/cTnT−のMCを示す。スケールバー=100μm。 FCV細胞の増殖またはアポトーシスに対するCSAの影響。図9a、b:EdUの取り込み。EdUで処理したFCV細胞をFACSにより純化し、細胞遠心分離によりスライドガラス上にプレーティングした。図9a:EdU(緑)およびDAPI(青)に関する二重染色。左のパネル:対照(CSA−)。右のパネル:CSA処理(CSA+)。EdU+核を矢頭で示す。スケールバー=100μm。図9b:EdU+ FCV細胞の定量的評価。全細胞中のEdU+細胞のパーセンテージを示す(各200核、n=3)。図9c:アネキシンV発現のFACS分析。ゲーティングされたFCV細胞集団を示す。アポトーシス細胞(アネキシンV+、赤い四角)のパーセンテージを示す。 心筋細胞の増殖またはアポトーシスに対するCSAの影響。図10a、b:Flk−3日目(Flk-d3)の心筋細胞におけるEdUの取り込み。図10a:cTnT(赤)、EdU(緑)およびDAPI(青)に関する三重染色。左のパネル:対照(CSA−)。右のパネル:CSA処理(CSA+)。EdU+/cTnT+心筋細胞を矢頭で示す。スケールバー=100μm。図10b:EdU+心筋細胞の定量的評価。全心筋細胞中のEdU+心筋細胞のパーセンテージを示す(各200核、n=3)。図10c:Flk−6日目(Flk-d6)のアネキシンV発現のFACS分析。ゲーティングされたGFP+心筋細胞集団を示す。アポトーシス細胞(アネキシンV+、赤い四角)のパーセンテージを示す。 FCV細胞の心筋細胞への分化に対するCSAの効果。図11a、b:CSAによる純化されたFCV細胞からの心筋細胞の誘導(実験4)。図11a:cTnT(褐色)で染色された心筋細胞の肉眼的所見。左のパネル:対照。右のパネル:CSA処理。スケールバー=400μm。図11b:cTnT染色の蛍光強度による心筋細胞誘導の定量的評価。相対蛍光強度を示す(n=3、*p<0.05vs対照)。 CSA処理による心筋細胞を含む血液細胞またはECの相反所見。Flk−6日目におけるFACS分析(実験1)。左のパネル:対照。右のパネル:CSA処理。X軸:αMHCプロモーターにより駆動されるGFP(心筋細胞)。Y軸:CD31(全EC)(a)、CD45(全白血球)(b)。全てのFlk1+細胞由来集団を分析した。 ECおよび心筋細胞分化に対するCSAの中胚葉特異的効果。CSAの中胚葉特異的処理によるFlk1+細胞からの心筋細胞およびECの誘導(実験5)。Flk−6日目(Flk-d6)におけるCD31(緑)およびcTnT(赤)に関する二重免疫染色。左のパネル:対照。右のパネル:CSA処理。スケールバー=100μm。CSAの中胚葉処理により、cTnT+心筋細胞の増加とそれに相反するCD31+ECの減少が誘導に着目されたい。 心筋細胞分化に対するFK506およびNF−AT阻害剤の効果。CSAによるFlk1+細胞からの心筋細胞の誘導(実験1)。写真:基剤(対照)、FK506またはNF−AT阻害剤11R−VIVITで処理されたcTnT染色(褐色)心筋細胞の肉眼的所見。スケールバー=400μm。棒グラフ:cTnT染色の蛍光強度による心筋細胞誘導の定量的評価。相対蛍光強度を示す(n=3)。 心筋細胞分化に対するTGF−β、wnt3aおよびDkk1の中胚葉特異的効果。提示した因子の中胚葉特異的処理によるFlk1+細胞からの心筋細胞の誘導(図4の実験5)。a:cTnT(赤)で染色された心筋細胞の肉眼的所見。スケールバー=400μm。b:cTnT染色の蛍光強度による心筋細胞誘導の定量的評価。相対蛍光強度を示す(n=3、*p<0.05、**p<0.01vs対照)。 ヒトiPS細胞の心筋細胞分化中の分化マーカーのRT−PCR分析。END2細胞上でのヒトiPS細胞培養中(分化0日目〜12日目)の種々の遺伝子のmRNA発現。遺伝子発現パターンはヒトiPS細胞の心筋細胞への分化を十分反映した。未分化細胞マーカーOct3/4は分化後には減少し、中胚葉/心臓前駆細胞マーカーislet1が6日目から見られた。いくつかのmRNAの発現はタンパク質または細胞表現型の出現に数日先行していた。すなわち、VEGFR2+中胚葉細胞は分化のおよそ8日後にヒトES細胞から出現したが(Sone, M.ら, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 27, 2127-2134 (2007))、中内胚葉マーカーbrachyury−Tおよび中胚葉マーカーKDR(VEGFR2)は分化4日目から出現した。cTnTは8日目から明らかになったが、最初の拍動コロニーは10日目以降に出現した。 FCV前駆細胞におけるIslet1およびNkx2.5の発現。純化されたFCV細胞におけるislet1および/またはNkx2.5発現細胞の定量的評価。FCV細胞をFACSにより純化し、細胞遠心分離によりスライドガラス上にプレーティングし、抗islet1およびNkx2.5抗体で二重染色した。棒グラフは、全FCV細胞中のislet1および/またはNkx2.5陽性細胞のパーセンテージを示す(各1000細胞、n=3)。] 図10a 図10b 図10c 図11a 図11b 図3A 図3B 図3C 図3D 図3E [0025] 発明の詳細な説明 定義 本明細書で用いる用語は全て、特に断りのない限り、当業者にとって通例の意味を有する。以下の用語は次のような意味を有する。] [0026] 本明細書において「心筋細胞」とは、心臓壁を構成し、自己拍動の特性を有する心筋の細胞を意味する。] [0027] 本明細書において「心臓前駆細胞」とは、前記心筋細胞の前駆細胞を意味する。この細胞は心臓の拍動筋肉と電気伝導組織を形成する心筋細胞および血管平滑筋細胞を生じる能力を有する。] [0028] 本明細書において「胚性幹細胞」または「ES細胞」とは、動物の初期段階の胚である胚盤胞内に存在する内部細胞塊に由来する多能性細胞を意味する。ES細胞は動物の身体のいずれの組織にも分化する能力を有する(Evans, M.J.およびKaufman, M.H., Nature 292, 154-156 (1981))。形質転換ES細胞を胚盤胞に戻し、続いて代理母の子宮に移植すれば、キメラトランスジェニック動物を作出できる。] [0029] 本明細書において「人工多能性細胞」または「iPS細胞」とは、卵母細胞、胚またはES細胞ではない分化細胞の核初期化により人工的に誘導した多能性を有する細胞を意味する。このiPS細胞は、Takahashi, K.およびYamanaka, S. (Cell 126, 663-676 (2006))、Takahashi, K.ら(Cell 131, 861-872 (2007))またはYu, J.ら(Science 318, 1917-1920 (2007))に記載された、3つまたは4つの転写因子をコードする遺伝子を用いて形質導入することにより哺乳類の体細胞から誘導することができる。] [0030] 本明細書において「Flk1」とは、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)を指す。] [0031] 本明細書において「Flk1+/CXCR4+」とは、前駆心臓中胚葉の指標であるMesp−1、GATA−4およびTbx5が有意に豊富なES細胞後代を同定するためのバイオマーカー対を意味する。このバイオマーカー対は、多能性幹細胞プール内に心臓形成の特性が現れたことを推定するために使用でき、心臓形成性細胞系列の標的選択を可能とする(Nelsonら, Stem Cells 26, 1464 -1473 (2008))。] [0032] 本明細書において「形質導入」とは、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターなどのベクターを用いて細胞に外来DNAを導入する手法を意味し、これにより、その細胞はその外来DNAを含む。] [0033] 本明細書において「移植」とは、動物の心臓の梗塞または傷害部位に、心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物を含む細胞インプラントまたは移植片を移植することを意味する。] [0034] 本明細書におい「シクロスポリン−A」または「CSA」とは、この化合物がT細胞の活性を阻害する能力を有することから、臓器または骨髄の移植後に患者の拒絶反応を防ぐために通常用いられる免疫抑制剤を指す。CSAはNovartis (Basel, Switzerland)から入手可能である。] [0035] 本明細書において「動物」、「被験体」または「患者」とは、霊長類、齧歯類および有蹄類を含む哺乳類、好ましくはヒトを意味する。] [0036] 発明の説明 1.ES細胞またはiPS細胞からの心筋細胞および/または心臓前駆細胞の生成 本発明は、中胚葉細胞に分化されたiPS細胞またはES細胞をシクロスポリン−A(「CSA」と呼ぶ)の存在下で培養することを含む、心筋細胞および/または心臓前駆細胞を生産するための方法を提供する。] [0037] 「中胚葉細胞に分化されたiPS細胞またはES細胞」とは、これらの細胞が中胚葉細胞(すなわち、中胚葉〜初期心臓分化系列)、好ましくはFlk1+(キナーゼインサートドメインタンパク質受容体、Kdrとしても知られる)細胞に分化された段階であることを意味する。本発明によれば、中胚葉細胞段階でiPS細胞またはES細胞の培養物にCSAを加えると、それらは常法に比べてより効率的に心筋細胞および/または心臓前駆細胞に分化される。] [0038] これまでに、アクチビンAおよび骨形成因子4(BMP4)を含む誘導物質を用いると、ES細胞およびiPS細胞から心筋細胞、心血管細胞または心血管前駆細胞が誘導されることが知られている(Takahasi, K.ら, Cell 131, 861-872 (2007); Laflamme, M.A.ら, Nat. Biotechnol. 25, 1015-1024 (2007); Yang, L.ら, Nature 453, 524-528 (2008))。しかしながら、CSAによるES細胞またはiPS細胞からの心筋細胞および/または心臓前駆細胞の誘導は、本発明者らにより今回初めて見出された。] [0039] 本発明者らは、以下、出発細胞としてのES細胞またはiPS細胞からの心筋細胞および/または心臓前駆細胞の生成を詳細に説明する。] [0040] 1.1ES細胞の調製 本発明では、心筋細胞および/または心臓前駆細胞を誘導するための出発細胞としてすべてのES細胞を使用することができる。本明細書において「心筋細胞および/または心臓前駆細胞」とは、心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物もしくは集団を含むものとする。] [0041] 使用可能なES細胞としては、霊長類、齧歯類、有蹄類などのES細胞のような哺乳類ES細胞を含み、霊長類としては、ヒト、サル、チンパンジーなどを含み、齧歯類としては、マウス、ラット、ハムスターなどを含み、有蹄類としては、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどを含む。] [0042] マウスES細胞は、Evans, M.J.およびKaufman, M.H. 1981 (Nature 292, 154-156 (1981))により、マウス受精卵の初期段階の胚である胚盤胞に存在する内部細胞塊から初めて樹立された。その後、1998年にThomson, J.A.ら(Science 282, 1145-1147 (1998))により、ヒト胚盤胞の内部細胞塊からヒトES細胞も樹立された。同様に、ウシ胚盤胞の内部細胞塊からウシES様細胞も樹立された(特開2002−153281)。] [0043] ES細胞は多能性幹細胞であるので、あらゆる細胞、組織または器官に分化する能力および半永久的に増殖する能力の双方を有する。] [0044] ES細胞は、既知の方法により、哺乳類胚盤胞の内部塊から調製することができる。例えば、この方法は、in vivoまたはin vitro受精後に哺乳類の卵から胚盤胞を得るステップ;その胚盤胞からマイクロマニピュレーションにより内部細胞塊を取り出すステップ;取り出した内部細胞塊を、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、α−EME培地、ハムF−12培地、RPMI1640培地またはその混合物などの動物細胞培養培地中、マウス胚繊維芽細胞(MEF)フィーダー上またはフィーダー不含条件で約1〜2週間培養するステップ;培養ディッシュからES細胞を回収するステップ;および回収したES細胞をフィーダー細胞の存在または非存在下で培養することにより複数回継代するステップを含む。フィーダー不含条件での内部細胞塊の培養は、MEFで馴化された培地中、マトリゲルまたはラミニン上で行うことができる(Xu, C.ら, Nat. Biothechnol. 19, 971-974 (2001))。これらのMEF細胞は、マイトマイシンC、ストレプトマイシン、ペニシリンなどの抗生物質で予め処理されていてもよい。ディッシュからのES細胞の脱着は、EDTAまたはコラゲナーゼIVと一緒ににインキュベートすることにより行うことができる(Laflamme, M.A.ら, Nat. Biotechnol. 25, 1015-1024 (2007))。培養培地には、ウシ胎児血清(FBS)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、β−メルカプトエタノール(β−ME)、非必須アミノ酸、グルタミン酸、ピルビン酸ナトリウムおよび抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンなど)などから選択する物質を含むことができ、培養は一般に約37〜38.5℃、2〜5%CO2および98〜95%空気の雰囲気中で行うことができる。継代培養は3〜4日間隔で、MEFフィーダー上またはコラゲナーゼIでコーティングしたプレート上で行うことができる。] [0045] 調製されたES細胞は一般にそれらのマーカー遺伝子を用いて同定することができる。ヒトES細胞マーカー遺伝子の例としては、Oct3/4(同じタンパク質であるが、Oct3またはOct4とも呼ばれる)、アルカリ性ホスファターゼ、Sox2、Nanog、増殖分化因子3(GDF3)、reduced expression 1(REX1)、繊維芽細胞増殖因子4(FGF4)、胚性細胞特異的遺伝子1(ESG1)、developmental pluripotency-associated 2(DPPA2)、DPPA4、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT1)、未分化ヒトES細胞特異的表面抗原(SSEA−3、SSEA−4、Tra1−60、Tra1−81)などがある(Takahashi, K.ら, Cell 131, 861-872 (2007); Kroon, E.ら, Nat. Biotechnol. 26, 443-452 (2008); Xu, C.ら, Nat. Biotechnol. 19, 971-974 (2001))。これらのマーカー遺伝子は、以下の1.2節に記載されるヒトiPS細胞でも発現する。少なくとも、Oct3/4、アルカリ性ホスファターゼ、Sox2、Nanog、Gdf3およびFgf4マーカー遺伝子はマウスES細胞でも同様に発現される(Takahashi, K.およびYamanaka, S., Cell 126, 663-676 (2006))。マーカー遺伝子または遺伝子産物の存在はRT−PCRまたはウエスタンブロッティングのいずれかによって検出することができる。] [0046] 1.2iPS細胞の調製 上記のように、Takahashi, K.およびYamanaka, S. (Cell 126, 663-676 (2006);国際公開WO2007/069666)によってマウスiPS細胞が最初に樹立され、その後、Takahashi, K.ら(Cell 131, 861-872 (2007))および、Yu, J.ら(Science 318, 1917-1920 (2007))によりそれぞれヒトiPS細胞が樹立された。] [0047] iPS細胞は、核初期化因子としてOctおよびSoxファミリーメンバーを含む少なくとも3つまたは4つまたは6つの転写因子をコードする遺伝子により体細胞に形質導入を行うことにより、体細胞から誘導することができる。他の転写因子は、Klfファミリーメンバーと任意のMycファミリーメンバーの組合せおよび/またはNanogとLinファミリーメンバーの組合せであり得る。] [0048] Octファミリーメンバーの例としては、限定されるものではないが、Oct3/4、Oct1AおよびOct6などがあり、好ましくは、Oct3/4が挙げられる。Oct3/4はPOU(Pit、Oct、Unc)ファミリーに属する転写因子であり、胚細胞、生殖細胞またはES細胞のような未分化細胞のマーカーとして報告されている(Niwa, H. Cell Struc. Func. 26, 137-148 (2001); Pesce, M.およびScholer, H.R., Stem Cells 19, 271-278 (2001))。] [0049] Sox(SRY関連HMGボックス)ファミリーメンバーの例としては、限定されるものではないが、Sox1、Sox3、Sox7、Sox15、Sox17およびSox18などがあり、好ましくはSox2が挙げられる。Sox2は、多能性細胞においてOct3/4と協同しながらFgf4の発現を活性化する因子である(Yuan, H.ら, Genes. Dev. 9, 2635-2645; Avilion, A.A.ら, Genes Dev. 17, 126-140 (2003))。] [0050] Klf(Kruppel様因子)ファミリーメンバーの例としては、Klf1、Klf2、Klf4およびKlf5などがあり、好ましくはKlf4が挙げられ、腫瘍抑制因子として報告されている(Ghalebら, Cell Res. 15, 92-96 (2005))。] [0051] Mycファミリーメンバーの例としては、c−Myc、N−MycおよびL−Mycなどがあり、好ましくはc−Mycが挙げられ、細胞の分化および増殖に関与する転写制御因子である(AdhikaryおよびEilers, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 6, 635-645 (2005))。] [0052] Nanogは、胚盤胞の内部細胞塊で最も高く発現し、分化細胞では発現しないホメオボックスタンパク質である(Chambers, L.ら, Cell 113, 643-655 (2003); Zaehres, H.ら, Stem. Cells 23, 299-305 (2005))。] [0053] Linファミリーメンバーの例としては、未分化ヒトES細胞のマーカーとして知られるLin28が挙げられる(Richards, M,ら, Stem Cells 22, 51-64 (2004))。] [0054] より具体的には、転写因子の組合せとしては、Oct3/4、Sox2、Klf4およびc−Myc(Takahashi, K.およびYamanaka, S., Cell 126, 663-676 (2006); Takahashi, K.ら, Cell 131, 861-872 (2007));Oct3/4、Sox2およびKlf4(Nakagawa, M.ら, Nat. Biotechnol. 26, 101-106 (2008));ならびにOct3/4、Sox2、NanogおよびLin28(Yu, J.ら Science 318, 1917-1920 (2007))がある。さらに、次の6つの転写因子の組合せ:Oct3/4、Nanog、Sox2、Lin28、c−MycおよびKlf4が使用可能であり、この組合せはヒト体細胞からiPS細胞を生成する効率を高めることができる(Liao, J.ら, Cell Res. 18, 600-603 (2008))。Nakagawa, M.ら (2008)によれば、3つの転写因子Oct3/4、Sox2およびKlf4をコードする遺伝子によるヒトまたはマウス体細胞への形質導入は奇形腫の形成または腫瘍形成を劇的に抑制することができる。] [0055] 核初期化因子をコードする遺伝子は、通常のクローニングおよび/またはRT−PCR法により、各遺伝子が存在する細胞または組織のmRNAから予め合成されたcDNAライブラリーから個々に分離することができる。それらによりコードされている遺伝子およびタンパク質の配列はNCBI(USA)にアクセスすることによりGenBankから入手することができる。] [0056] 体細胞としては、一次細胞、二次細胞およびその細胞系統を含め成体および胎児体細胞が用いられる。体細胞の例としては、限定されるものではないが、皮膚細胞、ケラチノサイト、肝臓細胞、胃細胞、腸細胞、脾臓細胞、腎臓細胞、食道細胞、骨細胞、脳細胞、神経細胞、グリア細胞、上皮細胞、表皮細胞、筋肉細胞、膵臓細胞および繊維芽細胞を含む、哺乳類(好ましくは、ヒト)の組織および器官からのあらゆる細胞を含む。] [0057] iPS細胞の生成のための形質導入は、限定されるものではないが、ウイルスおよびプラスミド、リポフェクション、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションなどのベクターの使用を含む。複製欠陥型であるウイルスベクターの例としては、限定されるものではないが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどが挙げられる。好ましくは、市販のベクターがベクターとして使用可能であり、ウイルスベクターの例としては、gagに欠陥があるpMX、pMYおよびpMZ(Cosmo Bio, Japan);レトロXQベクター(Clontech, the Netherlands)およびpLenti6/Ubcベクター(Invitrogen, USA)などが挙げられる。] [0058] ベクターを用いた形質導入の場合、核初期化因子をコードする遺伝子は個々にベクターDNAに挿入してもよいし、あるいは組み合わせて単一のベクターDNAに挿入してもよい。これらの遺伝子は、それらが発現し得るように、プロモーターおよびエンハンサーなどの調節配列と機能し得る形で連結されてもよい。プロモーターの例としては、CMVプロモーター、MSVプロモーター、RSVプロモーターおよびSV40プロモーターなどがある。これらのベクターはさらに、薬剤耐性遺伝子(例えば、ピューロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子またはハイグロマイシン耐性遺伝子など)などの陽性選択マーカー、陰性選択マーカー(例えば、ジフテリア毒素Aフラグメント遺伝子またはチミジンキナーゼ遺伝子など)、インターナルリボソームエントリーサイト(IRES)、ターミネーター、複製起点などを含み得る。] [0059] 体細胞(例えば、5×104〜1×107細胞/100mmディッシュ)を、約37℃にて、MEFフィーダー上で、またはフィーダー不含条件(例えば、マトリゲルコーティングプレート上)で、上記の3つ、4つまたは6つの核初期化因子を含むベクターのカクテルで形質導入またはトランスフェクションし(Takahashi, K.ら, Cell 131, 861-872 (2007))、その結果形質導入の約1〜4週間後にiPS細胞またはそのコロニーが誘導される。用いる培養培地はDMEM、α−MEM、ハムF12培地、RPMI1640培地またはその混合物であってよく、この培地はFBS、抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンなど)、非必須アミノ酸、グルタミン酸、ピルビン酸ナトリウム、β−MEなどを含み得る。その後、生成されたiPS細胞を、bFGFを添加したマウスまたは霊長類ES培地で維持すればよい。継代では、iPS細胞を約37℃にてコラゲナーゼIV(例えば1mg/ml)を含有するDMEM/F12とともにインキュベートし、それらがほぼ集密状態にまで増殖したところで、細胞を掻き取り、新しい培養ディッシュのSNLフィーダー細胞上へ移す。ヒトiPS細胞のフィーダー不含培養では、細胞をマトリゲルコーティングプレート上、MEF馴化または非馴化霊長類ES細胞培地(双方ともbFGF(例えば4ng/ml)を含有)中に播種し、培地を毎日新鮮培地に交換すればよい。] [0060] iPS細胞の生成は、特異的マーカー遺伝子の発現により確認することができる。これらのマーカー遺伝子は、マウスiPS細胞についてはTakahashi, K.およびYamanaka, S. Cell 126, 663-676 (2006)に、また、ヒトiPS細胞についてはTakahashi, K.ら, Cell 131, 861-872 (2007)に記載されている。ヒトまたはマウスiPS細胞において発現されるこれらのマーカー遺伝子は、それぞれ上記の1.1節に記載のようなヒトまたはマウスES細胞におけるマーカー遺伝子とほとんど同じである。アルカリホスファターゼ、Oct3/4、Sox2およびNanogのマーカー遺伝子の発現は、生成されたiPS細胞が未分化で、ES様の多能性細胞であることを示す。マーカー遺伝子または遺伝子産物の存在はRT−PCRまたはウエスタンブロッティングのいずれかにより検出することができる。] [0061] 他の哺乳類iPS細胞でも、上記と同様の方法でそれらを生成し、同定することができる。] [0062] 1.3ESまたはiPS細胞からの中胚葉細胞の誘導および分化 本発明によれば、中胚葉細胞に分化しているESまたはiPS細胞をCSAの存在下で培養すると、それらのESまたはiPS細胞が心筋細胞および/または心臓前駆細胞に分化する。] [0063] 本発明において、中胚葉細胞はFlk1陽性(すなわちFlk1+)であることによって特徴付けられ、このFlk1+細胞は、Yamashita, J.ら (Nature 408, 92-96 (2000) 、Yamashita, J.K.ら(FASEB J. 19, 1534-1536 (2005))またはNarazaki, G.ら,Circulation 118, 498-506 (2008)により記載されている方法によって、ESまたはiPS細胞をコラーゲンIVコーティングディッシュ(LIF(−)およびフィーダー(−))上で4〜5日間培養することにより誘導することができる。] [0064] 簡潔には、ES細胞を、分化培地としての10%FCSを含有するα−MEM中で、コラーゲンIVコーティングディッシュまたはマイトマイシンC処理コンフルエントOP9細胞シート(MMC−OP9)上に、1〜10×103細胞/cm2の細胞密度で4.5日間培養する。iPS細胞については、細胞をまずゼラチンコーティングディッシュに、1〜10×103〜104細胞/cm2の細胞密度でプレーティングし、30分間培養して接着したフィーダー細胞を排除し、次に、接着していない細胞を、分化のために回収する。細胞を回収し、Flk1+細胞を純化するために蛍光活性化細胞選別(FACS)を行う。] [0065] その後、純化されたFlk1+細胞をMMC−OP9上に1〜10×103〜104細胞/cm2の細胞密度でプレーティングし、CSAを含有する分化培地(10%FCSを添加したα−MEM)中、約37℃で2〜6日間培養して心臓分化を誘導する。培地は2日ごとに交換する。FCV(Flk1+/CXCR4+/血管内皮カドヘリン−)細胞の誘導およびFCV細胞の選別を記載のように行う(Yamashita, J.K.らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。純化されたCSA誘導FCV細胞は高い心臓前駆細胞活性を有し、これらの細胞はFlk1、CXCR4、GATA4、Tbx3、Nkx2.5およびislet1などの心臓前駆細胞マーカーを発現する(図5)。Flk1+中胚葉細胞培養物にCSAを加えると、CSA無しの場合より、約17倍高い心筋細胞を生成し、約22倍高いFCV前駆細胞を生成する(図6)。] 図5 図6 [0066] 培養培地におけるCSAの濃度は、例えば、およそ0.1〜10μg/mL、好ましくはおよそ1〜3μg/mLである。培養4〜6日後、ES細胞またはiPS細胞由来中胚葉細胞は、心筋細胞を生じる能力を有する自己拍動心筋細胞および/または心臓前駆細胞に分化する。] [0067] 心筋細胞の生成は次の点: (1)拍動細胞であること(図1a); (2)心臓トロポニン−T(cTnT)に関して陽性であること(図1b、c); (3)筋節形成を示すこと(図1e); (4)純化された心筋細胞の活動電位がペースメーカー電位を有する細胞の存在を示すこと(図1f);および (5)心室型細胞はペースメーカー電位および自己拍動が無いこと(図1g); (6)純化されたCSA誘導心筋細胞がα−ミオシン重鎖(MHC)、ミオシン軽鎖(MLC)2vおよび2a、Nkx2.5、GATA4およびT−boxタンパク質3(Tbx3)などの心臓マーカーmRNA発現を示すこと(図5) により確認することができる。] 図5 [0068] 心臓前駆細胞の生成は、Flk1、CXCR4、GATA4、Nkx2.5、islet1などの心臓前駆細胞マーカーのmRNAの発現により確認することができるが、逆に、心臓前駆細胞は、成熟心筋細胞マーカーMHC、MLC−2vおよびMLC−2aを発現しない(図5)。] 図5 [0069] 本発明によれば、ES細胞の場合、約60%のFlk1+細胞由来細胞が心筋細胞に変化し(図1h)、CSA処理は、同数のFlk1+細胞から出発してFACS純化心筋細胞の収量に約17倍の増加をもたらす(図1i)。その結果、1個のES細胞からおよそ200個の心筋細胞を得ることができた(図6)。] 図6 [0070] 同様に、iPS細胞の場合、純化されたiPS細胞由来Flk1+細胞に対するCSA処理は、CSAで処理しなかった場合よりも心筋細胞の出現をおよそ12倍顕著に増加させ(図2a、b)、CSA処理はまたFCV心臓前駆細胞集団も劇的に増加させる。iPS細胞由来Flk1+細胞からのFCV細胞はCSAにより28%まで増加する(図2c)。] [0071] ヒトiPS細胞をEND−2臓側内胚葉様間質細胞上で培養すると(Mummery, C.らCirculation 107, 2733-2740 (2003))、培養のおよそ10〜12日後に自己拍動コロニーが見られる(図2d)。これらの拍動細胞はcTnT陽性であり(図2e)、アクチニン染色を伴う明らかな筋節形成を示す(図2f)。拍動細胞では、細胞内Ca2+レベルは収縮と同期して増える(図2g)。これらの結果は、本発明の方法によりヒトiPS細胞から機能的心筋細胞が首尾よく誘導できることを示す。] [0072] よって、本発明は、CSAの新たに発見された中胚葉特異的効果によって、ES細胞またはiPS細胞から心臓前駆細胞および心筋細胞を有効に生成するための新規な方法を提供する。] [0073] CSAにより増殖されたFCV細胞の心筋細胞へのin vivo分化能をラット慢性心筋梗塞モデルへの移植のより調べると(Tambara, K.らCirculation 108 suppl II, 259-263 (2003))、移植されたFCV細胞は心筋細胞に首尾よく分化し、梗塞心臓に組み込まれ、傷病組織においてGFP+/cTnT+ドナー細胞由来心筋細胞層をより効率よく形成する(図1l、m;図3B)。また、移植された前駆細胞は組織化された心筋に首尾よく分化する(図3C)。FCV細胞の移植によって、活性のある再生心筋細胞の最大面積が、GFP+心筋細胞の場合より8倍高く増加するという結果がもたらされる(図3D)。] 図3B 図3C 図3D [0074] ESまたはiPS細胞から誘導されたFlK1+中胚葉細胞とCSAとの組合せの使用を含む本発明の方法により生成された、心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物もまた、本発明の範囲に包含される。CSAにより誘導された心筋細胞は心筋組織を組み立てる能力を有し、CSAにより誘導された心臓前駆細胞は、心筋細胞を生じるFlk1+/CXCR4+/血管内皮カドヘリン−細胞集団である。さらに、CSAにより誘導された心筋細胞は、α−ミオシン重鎖(MHC)、ミオシン軽鎖(MLC)2vおよび2a、Nkx2.5、GATA4、T−boxタンパク質3(Tbx3)などのマーカーmRNAの発現を示し、CSAにより誘導された心臓前駆細胞は、Flk1、CXCR4、GATA4、Nkx2.5、islet1などのマーカーmRNAの発現を示すが、成熟心筋細胞マーカーであるMHC、MLC−2vおよびMLC−2aは示さない(図5)。] 図5 [0075] 2.心筋細胞および/または心臓前駆細胞を誘導し得る薬剤のスクリーニング 本発明はさらに、心筋細胞および/または心臓前駆細胞を誘導し得る薬剤について候補薬剤をスクリーニングするための方法であって、中胚葉細胞に分化されたiPS細胞を候補薬剤の存在下で培養すること、および該薬剤を拍動コロニーおよび/またはFlk1+/CXCR4+/血管内皮カドヘリン−細胞の形成に基づいて選択することを含む方法を提供する。] [0076] スクリーニング系の培養条件は、CSAの代わりに候補薬剤を用いること以外は上記の1.3節に記載されているものと同じである。すなわち、iPS細胞から誘導された純化されたFlk1+中胚葉細胞をMMC−OP9上に1〜10×103〜104細胞/cm2の密度でプレーティングし、候補薬剤を含有する分化培地(10%FCSを添加したα−MEM)中、約37℃で培養し、その後、心臓分化が誘導されるかどうかを、上記の1.3節に記載されているように心臓前駆細胞マーカーおよび/または心筋細胞マーカーの遺伝子の発現を測定することによるか、またはFCV心臓前駆細胞または拍動コロニーの形成を検出することにより判定する。FCV心臓前駆細胞はFlk1陽性、CXCR4陽性、血管内皮カドヘリン陰性であり(Yamashita, J.K.ら,FASEB J. 19, 1534-1536 (2005))、これらのマーカーの有無は、プライマーを用いたRT−PCRによるか、または各マーカーに対する抗体を用いるFACSもしくはウエスタンブロッティングにより判定される。] [0077] 候補薬剤としては、限定されるものではないが、小分子、ペプチド、ポリペプチド、(糖)タンパク質、ヌクレオシド、核酸、オリゴ糖、炭水化物、(糖)脂質、天然産物、合成化合物および無機物などが挙げられる。これまでのところ、アクチビンAとBMPの組合せが分化誘導物質として知られている(Takahashi, K.ら, Cell 131, 861-872 (2007))。] [0078] このスクリーニング法は、スクリーニング系にiPS細胞由来Flk1+中胚葉細胞を用いること、および指標としてFCV心臓前駆細胞または拍動コロニー(心筋細胞、cTnT陽性)の形成を判定することを特徴とする。この方法により選択された薬剤は心筋細胞および/または心臓前駆細胞を誘導することができ、よって、再生療法において新規な心臓再生薬として使用可能である。] [0079] 3.心筋細胞および/または心臓前駆細胞の治療への使用 本発明はさらに、上記の1.3節に記載されている手順によって調製された心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物を被験体の心臓に移植することを含む、心疾患を有する被験体を治療するための方法を提供する。] [0080] 本発明はさらに、心疾患を有する被験体を治療するための医薬または移植片またはインプラントの製造における、上記の§1.3に記載されている手順によって調製された心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物の使用も提供する。] [0081] 上記の発明において、心臓前駆細胞を使用するのが好ましい。] [0082] これらの発明は、心臓修復または心臓再生のための幹細胞に基づく方法を提供する。特に、Dr. Yamanaka, S (Cell 131, 861-872 (2007); Nat. Biotechnol. 26, 101-106 (2008))のグループによって発見された体細胞からヒトiPS細胞を誘導する技術を本発明と融合させると、雌性だけでなく雄性においても、心臓修復または再生のための幹細胞に基づく方法をもたらすことが可能となる。] [0083] 被験体としては、上記で定義されたような哺乳類、好ましくはヒトを含む。] [0084] 心疾患としては、限定されるものではないが、心筋梗塞および心筋症を含む心不全が含まれる。] [0085] 最近、Laflamme, M.A.らは、アクチビンAおよびBMP4を用いてヒトES細胞から誘導された心筋細胞が梗塞ラット心臓の機能を高めたことを報告した(Nat. Biotechnol. 25, 1015-1024 (2007))。本発明者らもまた、今回、ラット心筋梗塞モデルへの心臓前駆細胞の移植が梗塞領域における移植細胞の肉眼的所見および心筋組織への組み込み、すなわち壁の肥厚をもたらすことを見出した(図1l、1m、3B、3D、3E)。ラットの心筋梗塞は60分の虚血とその後の再潅流により誘発させることができる(Laflamme, M.A.ら,前掲)。] [0086] 本発明によれば、iPSまたはES細胞から誘導された心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物、好ましくは心臓前駆細胞は、ヒトを含む哺乳類の心臓の梗塞領域(例えば、梗塞病巣)にインプラント、移植片またはグラフトの形で、直接注入する手法により外科的に移植される。移植細胞の細胞総数は例えば1×107〜1×109細胞である。] [0087] 療法において移植される細胞調製物は、純化し、in vivo使用におけるそれらの安全性を確認しなければならない。これらの細胞の純化は例えばパーコール勾配およびFACSの使用により行うことができる。安全性については、腫瘍形成または発癌のあらゆるリスクを回避しなければならない。特に、iPS細胞の誘導の場合、c−Mycおよびレトロウイルスベクターの使用を避けることが望ましいかもしれない。純化された細胞は好ましくは無血清培地で保存し、1〜2日以内に使用されなければならない。] [0088] 以下の実施例は本発明を説明するために示し、本発明の範囲を何ら限定するものではない。] [0089] 実施例1:ES細胞に対するCSAの心臓形成効果 本発明者らの心筋細胞分化系では、一連の4つの分化段階の細胞集団、すなわち、未分化ES細胞、Flk1+中胚葉細胞、FCV心臓前駆細胞および心筋細胞を同定および純化ことができる(図4)(Yamashita, J.ら Nature 408, 92-96 (2000); Yamashita, J.K. らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。純化されたFlk1+細胞をOP9間質細胞上で培養すると、培養4日(Flk−4日目(Flk-d4))で自己拍動心筋細胞が出現する。細胞移植試験に用いる前に、心筋細胞分化に対するin vitroでの効果を確認するためにFlk1+細胞にCSAを加えたところ、CSA(1〜3μg/mL)は、Flk−6日目(Flk-d6)において拍動細胞を増加させる顕著な効果を示した(図4の実験1)(図1a)。CSAの添加は対照よりも、心臓トロポニン−T(cTnT)陽性心筋細胞の出現におよそ13倍の増加を誘導した(図1b、c)。CSAにより誘導された心筋細胞は明瞭なcTnT発現(図1d)と筋節形成(図1e)を示した。純化された心筋細胞の活動電位はペースメーカー電位を有する細胞の存在(図1f)、ならびにペースメーカー電位および自己拍動を欠いた心室型細胞(図1g)の存在を示した。純化されたCSA誘導心筋細胞は、α−ミオシン重鎖(MHC)、ミオシン軽鎖(MLC)2vおよび2a、Nkx2.5、GATA4、T−boxタンパク質3(Tbx3)などの種々の心臓マーカーmRNA発現を示した(図5)。これらの結果は、CSA処理により機能的心筋細胞が首尾よく誘導され、増殖されたことを示す。至適条件において、およそ60%のFlk1+細胞由来細胞がMHCプロモーターにより駆動されるGFPに陽性(GFP+)の心筋細胞となった(Yamashita, J.K.ら FASEB J. 19, 1534-1536 (2005))(図1h)。CSA処理は、同じ数のFlk1+細胞から出発してFACS純化心筋細胞の収量におよそ17倍の増加をもたらした(図1i)。結果として、1個のES細胞からおよそ200個の心筋細胞を得ることができた(図6)。] 図4 図5 図6 [0090] 本発明者らはさらに、CSAの分化段階特異的効果を評価した。CSAは未分化のES細胞からのFlk1+中胚葉細胞の出現または初期の分化過程での内胚葉および外胚葉マーカー発現には影響を及ぼさなかった(図4の実験2)(図7)。驚くべきことに、Flk1+細胞へのCSAの添加は特異的にFCV(Flk1+/CXCR4+/血管内皮カドヘリン−)心臓前駆細胞集団(Yamashita, J.K.らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005))を対照のおよそ10〜20倍に増加させた(図4の実験3)。全Flk1+細胞由来細胞内のFCV細胞の最大パーセンテージはCSAにより40%まで高まった(図1j)。純化されたFCV前駆細胞の収量はCSA処理によりおよそ22倍増加した(図1k)。純化されたCSA誘導FCV細胞は、Flk1、CXCR4、GATA4、Nkx2.5、islet1などの種々の心臓前駆細胞マーカーmRNA発現を示したが、成熟心筋細胞マーカーであるMHC、MLC−2vおよびMLC−2aは示さなかった(図5)。OP9細胞上のECおよびMCと同様に単一のFCV細胞から心筋細胞を生成することができた(図8)。同数の対照FCV細胞およびCSAにより増殖されたFCV細胞から、OP9細胞上において、同程度の数の心筋細胞が誘導された。CSAにより増殖されたFCV細胞の心筋細胞へのin vivo分化能を、ラット慢性心筋梗塞モデルへの移植により調べた(Yamashita, J.K.ら FASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。GFP+心筋細胞が移植された場合(図3A)に比べて、移植されたFCV細胞は首尾よく心筋細胞に分化し梗塞心臓中に組み込まれて、傷病組織において、より効果的にGFP+/cTnT+ドナー細胞由来心筋細胞層を形成した(図1l、m;図3B)。隣接するcTnT+細胞間にコネキシン43が見られたが、これは移植された前駆細胞が組織化された心筋に首尾よく分化したことを示唆している(図3C)。FCV細胞移植は、活性のある再生心筋細胞の最大面積について、GFP+心筋細胞移植により誘導した場合より8倍高い増加を示した(図3D)。再生心筋の推定体積はFCV細胞の注入により、GFP+細胞の場合よりもおよそ23倍増加した(図3E)。これらの結果は、CSAにより増殖されたFCV細胞はin vitroおよびin vivoの双方で高い心臓形成能を有することを示した。FCV細胞および心筋細胞におけるEdUの組み込みおよびアネキシンVの発現はCSA処理により影響を受けなかった(図9、10)が、このことはCSAによるFCV細胞および心筋細胞の増加が、FCV細胞および心筋細胞の増殖および/または延命によるものではなかったことを示唆する。純化されたFCV細胞にCSAを加えた場合(図4の実験4)には、心筋細胞に若干の増加(およそ2.6倍)が見られた(図11)。] 図11 図3A 図3B 図3C 図3D 図3E 図4 図5 図7 図8 [0091] 本発明者らはさらに、CSAの細胞および分子機構を調べた。Flk1+細胞に対するCSA処理(Flk−0〜6日目(Flk-d0〜Flk-d6):図4の実験1)は、Flk1+細胞からのECまたは血液細胞の相反する低下を伴った劇的な心筋細胞の増加を誘導した(図1n、図12)。CSAを中胚葉段階にのみ加えた場合でも(Flk−0〜2日目(Flk-d0〜Flk-d2):実験5)同様の効果が見られたが(図13)、これは、CSAはFlk1+細胞に作用し、ECまたは血液細胞から心筋細胞へ細胞運命をシフトさせ得ることを示唆する。カルシニュリン阻害剤であるCSAおよびFK506は、活性化T細胞(NF−AT)シグナルの核内転写因子の阻害を介してそれらの免疫抑制効果を発揮する(Martinez, S.およびRedondo, J.M. Curr Med Chem. 11, 997-1007 (2004))。それにもかかわらず、FK506およびNF−AT阻害剤11R−VIVITは、本発明者らの系において心筋細胞誘導に有意な効果を示さなかった(図14)ことから、CSAの主要な心臓形成効果はNF−ATに依存しないことを示している。Flk1+細胞へのwnt3aおよびTGF−βの中胚葉特異的添加(Flk−0〜2日目:図4の実験5)は、Flk−6日目において心筋細胞の有意な減少を示した(図15)。これに対して、Dkk1の中胚葉特異的添加はFlk−6日目において心筋細胞に有意な増加を示した(図15)。しかしながら、このDkk1の効果はCSAの場合よりも弱かった。これらの結果は、CSAの強力な心筋細胞誘導活性が、中胚葉特異的でかつNF−AT非依存的な様式で心臓前駆細胞の特異的かつ効率的な増殖を誘導する新規な機構によって誘発されることを示す。] 図12 図13 図14 図15 図4 [0092] 実施例2:iPS細胞に対するCSAの心臓形成効果 本発明者らはさらに、iPS細胞に対するCSAの心臓形成効果を調べた。最近、本発明者らは、マウスES細胞と同じ分化方法を用い、マウスiPS細胞(Okita, K.ら, Nature448, 313-317 (2007))が心筋細胞を生じ得ることを証明した(Yamashita, J.K.らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005); Narazaki, GらCirculation 118, 498-506 (2008))。純化されたiPS細胞由来Flk1+細胞に対するCSA処理は、対照よりおよそ12倍心筋細胞の出現を著しく増加させた(図2a、b)。CSA処理はまた、iPS細胞においてFCV心臓前駆細胞集団を劇的に増加させた。iPS細胞由来Flk1+細胞からのFCV細胞の最大パーセンテージはCSAにより28%まで増加した(図2c)。] [0093] 次に、本発明者らは、ヒトiPS細胞からの心筋細胞の分化を調べた(Nakagawa, M.ら Nat. Biotechnol. 26, 101-106 (2008))。ヒトiPS細胞をEND−2臓側内胚葉様間質細胞で培養したところ(Mummery, C. らCirculation 107, 2733-2740 (2003))、培養のおよそ10〜12日後に自己拍動コロニーが見られた(図2d)。拍動細胞はcTnT陽性であり(図2e)、アクチニン染色を伴う明らかな筋節形成を示した(図2f)。Fluo−8画像は、収縮と同期した細胞内Ca2+レベルの上昇を明らかにした(図2g)。これらの結果は、この方法によりヒトiPS細胞から機能的心筋細胞が首尾よく誘導されたことを示す。] [0094] 最後に、本発明者らは、ヒトiPS細胞からの心筋細胞の誘導に対するCSAの中胚葉効果を調べた。最近、本発明者らは、ヒトES細胞から分化のおよそ8日後にVEGFR2+中胚葉細胞が出現したことを証明した(Sone, M.ら Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 27, 2127-2134 (2007))。また、END2細胞上でヒトiPS細胞の培養中のmRNA発現パターンから、ヒトiPS細胞の心筋細胞への分化動態が明らかになり(図16)、ヒトiPS細胞における中胚葉誘導が分化6〜8日前後で起こることを示唆した。中胚葉段階(すなわち、分化8日目)で分化中のヒトiPS細胞に対するCSAの添加は拍動コロニーの出現を劇的に増加させたが、未分化段階では(分化0日目)増加させなかった(図2h)。出現した全コロニー数に違いはなかったが、出現した全コロニーのうちの拍動コロニーのパーセンテージは、CSA処理によりおよそ4.2倍増加し(図2i)、これは、CSAが中胚葉段階において分化中のヒトiPS細胞の運命を心筋細胞へシフトさせるであろうことを示唆する。ヒトiPS細胞において心臓前駆細胞はまだ同定されていないが、このCSAの中胚葉段階特異的効果は、ヒトiPS細胞におけるCSAによる心臓前駆細胞増殖を強く示唆する。よって、CSA処理は同様に、中胚葉特異的にiPS細胞からの心筋細胞の誘導を高めた。] 図16 [0095] したがって、本発明は、新たに発見されたCSAの中胚葉特異的効果によって、ES細胞またはiPS細胞からの高心臓形成性前駆細胞ならびに心筋細胞の特異的かつ効率的な増殖のための新規な技術を提供する。最近、胚様体中の心筋細胞に対するCSAの弱い誘導効果が報告された(Sachinidis, A.らCell. Physiol. Biochem. 18, 303-314 (2006))。本発明者らの新規な段階的な心筋細胞分化系は、胚様体の細胞混合物に埋没していたCSAの有力な中胚葉特異的効果を選択的に浮き立たせることに成功したはずである。この新規な培養系は、化学生物学的方法を用いて、低分子からの新規な心臓再生薬のスクリーニングおよび発見に役立つであろう。] [0096] マウスES細胞の分化の6〜6.5日後、心筋細胞出現の1〜2日前に検出されるFCV細胞は、本発明者らの知る限りでは、初めて同定された明瞭な心臓前駆細胞集団であり(Yamashita, J.K.らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005))、これまでで心筋細胞に最も近い上流の心臓前駆細胞である。最近、数種の多能性心臓前駆細胞集団が報告された(Kattman, S.J.ら, Dev. Cell 11, 723-32 (2006); Wu, S.M.ら Cell 127, 1137-1150 (2006); Moretti, A.ら Cell 127, 1151-1165 (2006))。Kattmanらにより報告された心臓前駆細胞は、FCV細胞よりも早い分化段階で(すなわち、分化4.25日後)同定された。他のNkx2.5+またはislet1+心臓前駆細胞は、ES細胞分化の4〜6日目に報告されている(Wu, S.M.ら Cell 127, 1137-1150 (2006); Moretti, A.ら Cell 127, 1151-1165 (2006))。本発明者らのFCV集団では、およそ42%の細胞がIslet1+、24%がNkx2.5+、そして14%がIslet1およびNkx2.5に関し二重陽性であった(図17)。さらに、FCV細胞はまた、Islet1+/Nkx2.5+前駆細胞と同様に、ECおよびMCへの分化能を併せ持っている(図8)。よって、FCV細胞は、Nkx2.5+および/またはIslet1+心臓前駆細胞と重複のある集団であるはずである。] 図17 図8 [0097] 本発明者らの知る限り、これはiPS細胞からの心臓前駆細胞および心筋細胞の特異的増殖の最初の報告である。iPS細胞から心筋細胞を誘導する本発明者らの有効な方法は、心筋細胞の患者特異的細胞モデルを作出するための重要な技術的基礎となる(Yamanaka, S. Cell Stem Cell 1, 39-49 (2007))。最近、ヒトES細胞を用い、心臓中胚葉/前駆細胞集団が確認された(Yang, L.ら Nature 453, 524-528 (2008))。ヒトiPS細胞からの心臓前駆細胞の同定、有効な誘導および純化は、細胞に基づく心臓再生に間違いなく重要である。よって、この新規な心臓分化技術は、細胞供給源の多様な選択肢、移植の方法および創薬を提供することにより心臓再生医療の開発に幅広く寄与するであろう。] [0098] 実施例1および2の実験手順 抗体 マウスE−カドヘリン(ECCD2)、マウスFlk1(AVAS12)に対するモノクローナル抗体(MoAb)を本発明者らの研究室でこれまでに記載されているように作製し、標識した(Yamashita, J.ら Nature 408, 92-96 (2000); Yamashita, J.K.らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。心臓トロポニン−T(cTnT)に対するMoAb(1:2000)はNeoMarkers (Fremont, CA)から購入した。ヒトiPS細胞を染色するため、cTnTに対するMoAb(1:100)をSanta Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA)から購入した。マウスα−アクチニンに対するMoAb(1:800)はSigma (St Louis, Mo)から購入した。PEコンジュゲートAVAS12のMoAbはeBioscience (San Diego, CA)から購入した。マウスCD31に対するMoAb(免疫染色用、1:200)およびビオチン化CXCR4はBD Pharmingen (San Diego, CA)から購入した。GFPに対するポリクローナルウサギ抗体(1:500)はMBL(Nagoya, Japan)から購入した。] [0099] 試薬 シクロスポリン−A(Novartis Pharmaから恵与された。)をジメチルスルホキシド(DMSO)(Nacalai Tesque, Kyoto Japan)に30mg/mLで溶かした。使用時に分化培地で1〜3μg/mLの希釈溶液を作製した。FK506(Astellas Pharma Incから譲渡)をDMSOに10mg/mLで溶かし、分化培地で10ng〜1μg/mLの希釈溶液を作製した。11R−VIVITはCalbiochem(Darmstadt, Germany)から入手した。Wnt3a、Dkk−1およびTGF−βはR&D Systems (Minneapolis, MN)から入手した。アネキシンV−FITCまたはPEはBD pharmingen (San Diego, CA)から購入した。Click−iT(商標)EdU Alexa Fluor488イメージングキットはInvitrogen(Carlsbad, California)から入手した。PKH67蛍光色素はSigma (St. Louis, MO)から購入した。] [0100] マウスESおよびiPS細胞の培養 マウスα−ミオシン重鎖(MHC)プロモーターにより駆動されるEGFP遺伝子を有するEMG7マウスES細胞を本研究に用いた(Yamashita, J.K.らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。Nanogプロモーターにより駆動されるGFP/IRES/ピューロマイシン耐性遺伝子を有する生殖系コンピテントマウスiPS細胞系統20D−17、38C−2および38D−2(Nanog−iPS細胞)をこれまでに記載されているように維持した。簡潔には、iPS細胞を、15%FCS、非必須アミノ酸、1mmol/Lピルビン酸ナトリウム、5.5mmol/L2−メルカプトエタノール、50ユニット/mLペニシリンおよび50mg/mLストレプトマイシンを含有するダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中、ピューロマイシン耐性遺伝子が安定的に組み込まれているマイトマイシン−C−処理マウス胚繊維芽細胞(MEF)のフィーダー層上で維持した。OP9間質細胞は記載のように維持した(Nishikawa, S.I.ら Development 125, 1747-1757 (1998))。] [0101] ヒトESおよびiPS細胞の培養 END−2細胞(Dr. Mummeryから恵与された。)は、これまでに記載されているように培養した(Mummery, C.らCirculation 107, 2733-2740 (2003))。Myc陰性ヒトiPS細胞系統253G1および253G4もこれまでに記載されているように維持した(Nakagawa, M.ら Nat. Biotechnol. 26, 101-106(2008))。ヒトiPS細胞からの心筋細胞分化の誘導は、これまでに記載されている方法(Mummery, C.ら Circulation 107, 2733-2740 (2003); Passier, R.ら Stem Cells 23, 772-780 (2005))に基づき、未分化ヒトiPS細胞の凝集塊をEND−2細胞上で共培養することにより行った。心筋細胞分化に対するCSAの効果を検討するため、2μg/mLのCSAを0日目または共培養開始の8日後に培養培地に加えた。12日目の拍動コロニー数を顕微鏡観察によりスコアリングした。細胞内Ca++測定およびアクチニンの免疫染色のため、拍動コロニーを機械的に切り取り、トリプシン−EDTA処理で穏やかに分離し、ゼラチンコーティングディッシュ上に再度プレーティングした。] [0102] 一例として、ヒトiPS細胞は成人ヒト皮膚繊維芽細胞(HDF)から次のようにして生成することができる。] [0103] 本発明者らは、ヒトOct3/4、Sox2およびKlf4(および±c−Myc)をコードするpMX(レトロウイルスベクター)をHDF−Slc7al(8×105細胞/100mmディッシュ)に導入した。ヒトOct3/4、Sox2、Klf4およびMycを、以下のセンス(「S」)およびアンチセンス(「AS」)プライマー: hOCT3/4−S、CACCATGGCGGGACACCTGGCTTCAG(配列番号1); hOCT3/4−AS、ACCTCAGTTTGAATGCATGGGAGAGC(配列番号2); hSOX2−S、CACCATGTACAACATGATGGAGACGGAGCTG(配列番号3); hSOX2−AS、TCACATGTGTGAGAGGGGCAGTGTGC(配列番号4); hKLF4−S、CACCATGGCTGTCAGTGACGCGCTGCTCCC(配列番号5); hKLF4−AS、TTAAAAATGTCTCTTCATGTGTAAGGCGAG(配列番号6); hMYC−S、CACCATGCCCCTCAACGTTAGCTTCACCAA(配列番号7); hMYC−AS、TCACGCACAAGAGTTCCGTAGCTGTTCAAG(配列番号8) を用いるRT−PCRにより、ヒト組織ライブラリーから個々にクローニングした。] [0104] 形質導入6日後、細胞をトリプシン処理により採取し、マイトマイシンC処理SNLフィーダー細胞(McMahonおよびBradley, Cell 62, 1073-1085 (1990))上に5×104または5×105細胞/100mmディッシュでプレーティングした。翌日、培地(10%FBSを含有するDMEM)を、4ng/mlの塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加した霊長類ES細胞培養用培地に置き換えた。およそ2週間後、顆粒状コロニーがいくつか出現し、これらのコロニーはhES細胞と形態上類似していなかった。25日目前後に、本発明者らは、平坦でhES細胞コロニーに似た明らかに異なるタイプのコロニーを認めた。5×104の繊維芽細胞から、本発明者らは約10のhES細胞様コロニーと約100の顆粒状コロニーを見出した。30日目、本発明者らはhES細胞様コロニーを採取し、酵素消化を行わずにそれらを機械的に小塊に解離させた。5×105個の繊維芽細胞を用いて培養を開始したところ、ディッシュは300を超える顆粒状コロニーでほぼ覆われた。本発明者らは、これらの顆粒状細胞中にいくつかのhES細胞様コロニーを時折観察した。] [0105] hES様細胞をヒトES細胞培養条件下、SNLフィーダー細胞上で増殖させた。それらは稠密で平坦なコロニーを形成した。各細胞は、大きな核と乏しい細胞質を特徴とするヒトES細胞に類似した形態を示した。hES細胞を用いた場合では、本発明者らは、コロニーの中央部で時折自発的分化を観察した。] [0106] これらの細胞は、フィーダー依存性においてもhES細胞と類似性を示した。それらはゼラチンコーティング組織培養プレートには接着しなかった。対照的に、それらは、ES培地でなくMEF馴化培地(MEF−CM)中、マトリゲルコーティングプレート上で未分化状態が維持された。] [0107] HDFの形質導入後に選択された細胞はヒトiPS細胞であり、その特性は形態を含め、Nakagawaら(Nat. Biotechnol. 26, 101-106 (2008))により記載されている。] [0108] 心筋細胞分化の誘導 Flk1+細胞の誘導およびFlk1+細胞の選別は、これまでに記載されているように行った(Yamashita, J.ら Nature 408, 92-96 (2000); Yamashita, J.K.らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。簡潔には、マウスES細胞(またはiPS細胞)を、分化培地(10%ウシ胎児血清を添加したα最小必須培地(GIBCO, Grand Island, NY))中、IV型コラーゲンコーティングディッシュ(Biocoat, BecktonDickinson)またはマイトマイシンC処理コンフルエントOP9細胞シート(MMC−OP9)上、1〜2.5×103細胞/cm2の細胞密度で96〜108時間培養した。(iPS細胞については、細胞をまずゼラチンコーティングディッシュにプレーティングし、30分間培養して接着したフィーダー細胞を排除し、次に、非接着細胞を回収し、分化させた)。細胞を回収し、Flk1+細胞を純化するためにFACSを行った。その後、純化されたFlk1+細胞をMMC−OP9上に1〜10×103細胞/cm2の細胞密度でプレーティングし、心臓分化を誘導するための分化培地で培養した。培地は2日ごとに交換した。FCV細胞の誘導およびFCV細胞の選別は記載されているように行った(Yamashita, J.K.ら FASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。純化されたFCV前駆細胞を再びMMC−OP9細胞上にプレーティングした。プレーティング前にMMC−OP9細胞を予めPKH67蛍光色素(Sigma)で染色した。CSA(1〜3μg/mL)をOP9細胞上の未分化ES細胞、Flk1+細胞またはFCV細胞に加えた。CSAは2日ごとに培地の交換とともに繰り返し加えた。同じ希釈率のDMSO単独も対照として用いた。] [0109] フローサイトメトリーおよび細胞選別 分化中のES細胞(またはiPS細胞)についてのFACSはこれまでに記載されているように行った(Yamashita, J.ら Nature 408, 92-96 (2000); Yamashita, J.K.らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。ES細胞分化の96〜108時間後、培養細胞を採取し、アロフィコシアニン(APC)結合AVAS12およびFITC結合ECCD2で染色した。ヨウ化プロピジウム(Sigma)を排除する、生存したFlk1+/E−カドヘリン−細胞をFACS Vantage(Becton Dickinson)により選別した。FCV前駆細胞のFACSでは、PKH67染色OP9細胞(Flk−2日目)上で純化されたFlk1+細胞の分化2日後に、培養細胞を採取し、PE結合AVAS12とビオチン化CXCR4の組合せで染色し、その後、ストレプトアビジン結合APCを加え、FACS分析を行った。PKH陰性集団を分析し、ES細胞由来細胞として選別した。Flk1+/CXCR4+集団(血管内皮カドヘリン陰性であった(Yamashita, J.K.ら FASEB J. 19, 1534-1536 (2005)))をFCV心臓前駆細胞として評価し、選別した。心筋細胞のFACSについては、OP9細胞上でのFlk1+細胞の培養6日後(Flk−6日目)に細胞を採取し、GFP+集団を分化心筋細胞として評価し、選別した。] [0110] 免疫組織化学 ECおよび心筋細胞の免疫染色は記載のように行った(Yamashita, J.K.らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。簡潔には、4%パラホルムアルデヒド(PFA)固定細胞を2%スキムミルク(BD, bioscience)でブロッキングし、一次抗体とともにインキュベートした。免疫組織化学については、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Invitrogen)と結合させた抗マウスIgGを二次抗体として用いた。免疫蛍光染色については、Alexa 488または546と結合させた抗マウス、ラットおよびウサギIgを二次抗体として用いた。核をDAPI(Invitrogen)で可視化した。心臓に左心室の頂端から逆向きの灌流を行い、4%緩衝パラホルムアルデヒドで4℃にて2時間固定し、O.C.T化合物(Tissue-Tek; Miles, Inc.)に包埋し、厚さ6μmの横断切片を得た。Zenon Alexa Fluor 546標識キット(molecular Probes)で標識した一次抗体抗cTnTと抗GFPの混合物でcTnTおよびGFPの二重染色を行った後、二次抗体Alexa Fluor488結合抗ウサギIg(1:500)(Molecular Probes)を用いた。染色された細胞を、倒立蛍光顕微鏡Eclipse TE2000−U(Nikon, Tokyo, Japan)、デジタルカメラシステムAxioCam HRc(Carl Zeiss, Germany)またはBIOREVO BZ−9000(Keyence Osaka, Japan)を用いて写真撮影した。] [0111] 心筋細胞分化の定量 心筋細胞の分化を、記載のように(Yamashita, J.K.ら,FASEB J. 19, 1534-1536 (2005))Alexa Fluor 546を用いたcTnT染色の蛍光強度により定量的に評価した。染色細胞の画像をデジタルCCDカメラCoolSNAP−HQ(Roper, Atlanta, CA)に取り込み、画像インフォマティクスソフトウエアImage−Pro Plus(Media Cybernetics, Silver Spring, MD)を用いて計算した。24ウェルプレートの各ウェルにおいて倍率40倍の19視野を、Image−Pro Plus(Media Cybernetics)のStage−Proモジュールにより制御される倒立蛍光顕微鏡に取り付けた電動X−YステージProScan Stages(Planetron, Tokyo, Japan)で自動的に選択した。19視野から得られた全蛍光強度の合計を出現した心筋細胞の量として定義した。] [0112] 心不全モデル 実験手順は全て、日本の「実験動物の管理と使用に関する指針」に関する法律を遵守する京都大学動物実験指針に従って行った。本発明者らは、体重235〜255gのF344/nruヌードラット(Kyoto University, Japan)を用いた。心筋梗塞は、これまでに記載されているように(Tambara, K.らCirculation 108 suppl II, 259-263 (2003))、左開胸術による左冠動脈の基部近位の結紮により作出した。] [0113] ES細胞の移植 結紮後4週間で、中程度のサイズの心筋梗塞(MI)(梗塞サイズ:20〜40%)を有する6匹のラットを細胞移植実験に用いた。左開胸から、漏出を防ぐために注入点において6.0ポリプロピレン糸でマットレス縫合(mattress sultures)した後に、4×105細胞を含む100μL培養培地を、27ゲージの針を用い、傷病部位の中心部の心外膜下に注入した。注入後、MI領域の隆起を確認した。麻酔または外科術については記載されている(Tambara, K.らCirculation 108 suppl II, 259-263 (2003))。] [0114] 電気生理学的研究 FACSで純化されたGFP陽性心筋細胞集団をゼラチンコーティングカバーガラス上に播種した。これらの細胞を2〜4日間培養した後、カバーガラスをパッチクランプレコーディングチャンバーに移した。GFP蛍光(励起480±20nmおよび発光535±25nm)を示す細胞をパッチクランプ増幅器(Axopatch200B, Axon Instruments/Molecular Devices Corp., UnionCity, CA)による膜電位の測定に用いた。実験は全て36〜37℃で行った。] [0115] 溶液の組成: 浸漬溶液は(mmol/L)、140 NaCl、5.4 KCl、0.33 NaH2PO4、0.45 MgCl2、1.8 CaCl2および5HEPES(NaOHでpH=7.4)を含んだ。ピペット溶液は(mmol/L)、110 L−アスパラギン酸、30 KCl、5 MgATP、0.1 NaGTP、5 K2クレアチンリン酸、2 EGTA、10 HEPESおよび10 NaOH(KOHでpH=7.2)を含んだ。] [0116] 細胞内Ca2+の測定 ヒトiPS細胞に1μM Quest Fluo−8(ABD Bioquest, Inc. Sunnyvale, CA)を30分間加えた。拍動コロニーのFluo−8蛍光(励起495±10nmおよび発光535±20nm)を、背面照射型電子増倍管CCDカメラ(ImagEMHamamatsu Photonics K.K. Hamamatsu, Japan)で、16ミリ秒ごとに測定した。3枚の連続画像の平均をとった。iPSコロニーの蛍光強度(バックグラウンド蛍光を差し引いたもの)の変化を、記録開始時のもの(F0)との強度比(F1/F0)として表した。測定は室温で行った。] [0117] 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR) 種々の細胞集団から全RNAを、RNeasy Mini Kit(QIAGEN, Valencia, CA)を用いて単離した。cDNAをスーパースクリプトIII第一鎖合成系(Invitrogen)を用いて合成した。PCR反応はKODplus(Toyobo, Tokyo, Japan)を用いて行った。用いたプライマーは表Iおよび表IIに示す。] [0118] ] [0119] ] [0120] アネキシンVアポトーシスアッセイ FCV前駆細胞については、PKH67標識を用いずに、OP9細胞上で純化されたFlk1+細胞を2日分化させた後、細胞を採取し、PE結合AVAS12およびビオチン化CXCR4に対する抗体で細胞を染色した。GFP+心筋細胞はFlk−6日目にFACSにより純化した。次に、キットの染色プロトコールに従い、本発明者らはアネキシンV−FITCを加え、暗所、室温で15分間インキュベートし、FACS分析を行った。] [0121] EdU細胞増殖アッセイ 本発明者らは、FACSによるFCV細胞選別の2時間前に培養培地にEdU溶液(Invitrogen)(10μM)を加え、選別されたFCV細胞をサイトスピン(Thermo Shandon)(Waltham, MA)を用いてスライド上にプレーティングし、4%PFAで固定し、製造者の指示に従ってClick−iT(商標)反応カクテルとともにインキュベートすることによりEdUを検出した。EdU+/DAPI+ FCV細胞の数を定量するため、無作為に選択した10視野で細胞を計数した。GFP+心筋細胞については、本発明者らは、Flk−3日目において固定する2時間前に培養培地にEdU溶液を加えた。cTnT+/EdU+/DAPI+核を計数した。] [0122] 単一細胞の培養 単一に選別されたFCV細胞は、Cloncyte(BecktonDickinson, Franklin Lakes, NJ)を用い、96ウェルプレートの個々のウェルのOP9上にプレーティングされた(Yamashita, J.K.らFASEB J. 19, 1534-1536 (2005))。4日後、Abcam(Cambridge, UK)のカルポニンに対する一次抗体(1:500)、cTnT(1:2000)およびCD31(1:200)で三重染色を行った後、Alexa488結合抗ラットIg、Alexa546結合抗マウスIg、およびAPC結合抗ウサギIgを添加した。APCおよびDAPI染色ではそれぞれ青およびグレーの画像が得られた。] [0123] FCV細胞染色 選別されたFCV細胞を、サイトスピン(Thermo Shandon)を用いてスライド上にプレーティングし、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)から入手したAVAS12に対する抗体(1:2000)およびNkx2.5に対する抗体(1:250)、ならびにアイオワ大学(IOWA city, IA)から入手したislet1に対する抗体(1:500)で染色した。Alexa 488または546と結合させたマウス、ラットおよびウサギIgを二次抗体に用いた。] [0124] 誘導された内皮および血液細胞の分析 Flk1+細胞を6日間、OP9と共培養した。浮遊細胞および接着細胞を採取し、ビオチン結合抗CD45(eBioscience, San Diego, CA)または抗CD31抗体で染色した後、ストレプトアビジン−APCを加えた。染色された細胞をFACSvantageで分析した。] 実施例 [0125] 統計分析 データは、ウィンドウズ用のStatViewソフトウエア(version 5.0,SASInstitute Inc, Cary,NC)を用いて処理した。値は平均±SDとして報告する。全群の値の比較はANOVAによって行った。少なくとも3回の独立した実験を行った。p<0.05を有意とみなした。] [0126] 本発明により、ES細胞またはiPS細胞から心筋細胞および/または心臓前駆細胞を効率的に誘導するための技術が提供され、この技術は、生成された心筋細胞および/または心臓前駆細胞を患者に移植することにより、心臓再生、特に心疾患の治療に有用である。] [0127] 本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲を限定されるものではなく、実施形態は本発明の個々の態様の単なる例示を意図し、機能的に等価なものはいずれも本発明の範囲内にある。実際に、本明細書に示され、記載されているものの他、本発明の種々の改変が上の記載から当業者には明らかになるであろう。このような改変も添付の特許請求の範囲内にあるものとする。引用されている刊行物、特許および特許出願は全て、本開示と一致し、本開示を裏付けするあらゆる様式で、参照により本明細書に組み入れられる。]
权利要求:
請求項1 中胚葉細胞に分化された人工多能性幹(iPS)細胞または胚性幹(ES)細胞をシクロスポリン−Aの存在下で培養することを含む、心筋細胞および/または心臓前駆細胞を製造するための方法。 請求項2 中胚葉細胞がFlk1陽性(Flk1+)である、請求項1に記載の方法。 請求項3 心臓前駆細胞が心筋に分化する能力を有する、請求項1に記載の方法。 請求項4 心臓前駆細胞がFlk1+/CXCR4+/血管内皮カドヘリン−細胞集団である、請求項1に記載の方法。 請求項5 心筋細胞または心臓前駆細胞が心筋組織を組み立てる能力を有する、請求項1に記載の方法。 請求項6 iPS細胞またはES細胞が哺乳類に由来する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 請求項7 iPS細胞が哺乳類の体細胞から生成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 請求項8 iPS細胞が、少なくともOctおよびSoxファミリーメンバーの転写因子をコードする遺伝子による形質導入により、哺乳類の体細胞から生成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 請求項9 転写因子がKlfファミリーメンバーをさらに含むか、またはKlfファミリーメンバーとMycファミリーメンバーの組合せをさらに含む、請求項8に記載の方法。 請求項10 哺乳類がヒトまたはマウスである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。 請求項11 iPS細胞が、少なくともOct3/4およびSox2の転写因子をコードする遺伝子による形質導入により、ヒトまたはマウス体細胞から生成される、請求項8に記載の方法。 請求項12 転写因子がKlf4をさらに含むか、またはKlf4およびc−Mycをさらに含む、請求項11に記載の方法。 請求項13 体細胞が組織または器官からのものである、請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。 請求項14 心筋細胞および/または心臓前駆細胞を誘導し得る薬剤のための候補薬剤をスクリーニングするための方法であって、中胚葉細胞に分化されたiPS細胞を候補薬剤の存在下で培養すること、および該薬剤を拍動コロニーおよび/またはFlk1+/CXCR4+/血管内皮カドヘリン−細胞の形成に基づいて選択することを含む、方法。 請求項15 請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により製造された心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物。 請求項16 請求項15に記載の心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物を被験体の心臓に移植することを含む、心疾患を有する被験体を治療するための方法。 請求項17 被験体がヒトである、請求項16に記載の方法。 請求項18 心疾患が心筋梗塞または心筋症を含む心不全である、請求項16または17に記載の方法。 請求項19 心臓前駆細胞が被験体の心臓に移植される、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。 請求項20 心疾患を有する被験体を治療するための医薬または移植片またはインプラントの製造における、請求項15に記載の心筋細胞、心臓前駆細胞またはその混合物の使用。 請求項21 被験体がヒトである、請求項20に記載の使用。 請求項22 心疾患が心筋梗塞または心筋症を含む心不全である、請求項20または21に記載の使用。 請求項23 心臓前駆細胞が前記の製造に用いられる、請求項20〜22のいずれか一項に記載の使用。
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